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千葉家庭裁判所松戸支部 昭和39年(少)224号 決定 1964年5月22日

少年 N(昭二〇・三・六生)

主文

本件を千葉地方検察庁松戸支部検察官に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は、

第一、A他六名と共に普通乗用車(コンテッサー)に乗り昭和三九年三月○○日午前二時頃柏市○○○附近県道上を野田市から柏市方面に向け進行中○木○郎(当時二二年)等が乗用する普通乗用車(トヨペット・クラウン)と追いつ追われつしていたところ、同所一三一番地先県道上において、たまたま追越していつた右トヨペットに停車を余儀されたうえ、右○木○郎が下車して少年等の方に歩いてくるのを認めたのでA等と殴つてやろうと共謀のうえ、車から降りて右○木○郎に近づくや少年は同人から「何にをやつているのだ、この野郎」といわれながら左肩を突かれたのに憤激し、やにわにズボンのポケットに隠し持つていた刃渡一一・五糎の登山ナイフで同人の下腹部を一回突き刺して同人に対し、腹部刺創を与え、続いて、右トヨペット・クラウンの近くにいた○田○二および助手席にいた○田○男の顔面にそれぞれ切りつけて同人等に対し顔面切創を与えAが負傷している右○木○郎を殴つたり足げりする等の暴行を加えたが、右○木○郎をして右刺創にもとずく、穿孔性腹膜炎により同月一七日午前三時三〇分頃野田市○○町○○番地○○病院で死亡するに至らしめ、

第二、B他七名とともに前記同月○○日野田市所在の○○公園内を徘徊していたところ、同日午後四時一五分頃同市◎◎町◎◎番地先路上において、たまたま女子高校生と一諸に散歩していた高校生○野○雄(当時一七年)を目撃した際、少年等は右○野等を冷やかしてやろうと話し合い、まず少年が酔つたふりをして右○野にぶつかつたうえ、同人に因念をつけたところ、同人が少年に反抗の態度を示したため、少年は右B等と右○野を殴つてしまえ等と口々に叫びながら暴行することを共謀したうえ、同人の近くに走り寄り同人に対し、右B等が殴打足げり等を加え、少年が所持していた前掲登山ナイフで右○野の左背部を一回突き刺して同人に対し左肺後面下部刺創等の傷害を負わせ、よつて同人を同日午後七時四〇分頃同市××町××番地××病院で右傷害等により失血死させ

たものである。

(適条)

第一の事実中、傷害致死の点は刑法第二〇五条第一項、第六〇条、傷害の点は同法第二〇四条、第六〇条

第二の傷害致死の点は同法第二〇五条第一項、第六〇条

(刑事処分を相当と認めた理由)

本件は一〇数時間に登山ナイフで、しかも些細なことから二人の尊い人命を次々と奪つていることは、少年の無軌道、無神経な生活態度というより、人命軽視の思想の発現であると考えられ、その責任は極めて重大である。

よつて本件については担当調査官の意見どおり罪質および非行歴等に照らし刑事処分相当と認め少年法第二〇条により主文のとおり決定する。

なお、本件送致事実中殺人の点は調査、審判の結果によると殺意の点が証拠不十分(動機、経過、打撃の回数等を綜合して)であるから、これを前記に摘示したように傷害致死として送致したのである。

(裁判官 近藤繁雄)

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